民主党はまったく政府の役割をはたしていない   2011年3月25日    

 石原慎太郎の直言 U

もう一つの混乱と不安の源である電力でも、その根幹には「我欲」をコントロールできない日本社会の欠陥があらわれています。
この非常事態に最も優先されるべきは鉄道などの交通機関や、医療機関である事は誰の目にも明らかです。
しかし、現在、東京電力が実施している「計画停電」は、一律、地域ごとで行われていて、こうした優先順位がない。その為に様々なロスが生じている。

昨日はここまで書きましたので、今日はその続きを書きます。
それなら政府がイニシアティブをとり、強制力を持つ政令を出して、合理的な電力制限を行うべきです。

街のネオンは禁止する。 コンビニなどの営業時間の短縮。 夜間の自動販売機の停止・・・・・

なすべきことはたくさんあるはずですが、一向に拘束力の強い政令を発して、そうした措置を取る気配がない。
つまり「私:わたくし」を抑えて「公:おおやけ」を生かす、という国家として当然の決断を下せない。

14日、節電啓発担当大臣に任命された蓮舫さんが都庁に来たので、「節電を命じる政令を出しなさい」と進言したところ、「上に取り次ぎます」との返事。
「上」って誰なんでしょう・・・? 政令というのは所管大臣が決めて、総理に了解を貰って行うものです。
つまり御自分が権限者なのに、そういう(「上」に取り次ぐという返事しかできない)仕組みが分かっていない。若しくは「逃げている」。

口で「節電をお願いします」というのでは「政治ショー」を演じているだけだ。責任が伴っていない。
これで「政治主導」とは何をか言わんで、基本的な対策さえ自分たちで決められずに、結局は官僚たちに丸投げしているという民主党政権の実態を暴露している。

電力制限は、実例があるのです。
オイルショックの時に国が作った、電気事業法の政令に基づく電力使用制限措置を即刻発動させればいい。
その上で、現在の状況に適した、例えば対象に自動販売機などを加えたらいい。
罰則を含め、国民に強く協力を求めるためには、あくまで国の権限が必要です。国そのものがその気にならなければ、枝の自治体の動きも制限されたものになってしまう。

さらに、国民に大きな不安を与えているのが「原発事故」です。
対応の是非はいちいち論じませんが、政府・東京電力が事実を十分に開示していない事が、国民や諸外国の信頼を損ない、混乱を増幅させているのは間違いない。
東京都では、新宿などにガイガーカウンターを設置して、独自で放射線の量を計測し、データを随時公表しています。

こうした深刻な事態の折にこそ、たがいに落ち着いて正確な情報を流し、複合的・効果的な手立てを講じる必要があります。
ある夜、漢直人首相から電話がかかって来て、「尻込みしている東京都の消防庁の部隊を早く出動させてくれ」というので消防総監に連絡したら
「既に部隊を送ったが、現地との連絡が取れず、途中から戻ってきた」という。一事が万事、アホナ話で国民不在なのが情けない。

この事故で、原子力発電そのものを否定してしまえば、「日本は自らの将来を断つことになる」、ということを忘れてはなりません。
今回の地震の規模、津波の大きさは誰も想定していなかったものでした。
原子力発電関連技術で、世界をリードしている日本にとって、今回の事故を大きな反省材料にし、更なる安全対策を前に進める事は人類全体への貢献である。
資源のない日本がエネルギーの活路を求める先は、原子力発電以外にないのは明白である。

民主党政権にリーダーシップを期待できないのは以前から知れていたが、こういう非常事態になると、それが一挙に露呈してしまった。
自衛隊の出動にしても、もっと早くから有効に活用出来た筈だ。
孤立した深い入り江の奥で、津波で犠牲になった遺体がたくさん見つかったのに港湾設備が壊れた為に海からも被災地に入られなかったというが、
海上自衛隊の「おおすみ型輸送機」は実際は揚陸艇であり、岸壁がなくても人員を運び込めるホーバークラフトを搭載しており、ヘリコプターも離発着できたのに使わなかった。

援助物資の輸送でも、全日本トラック協会に政府からの要望は来ていないという。
埒が明かないから東京都トラック協会の星野会長に電話したところ、即座に全面的な協力を確約してもらいました。
被災地のニーズを確認した上で、全国的に物資援助を行って行かなくてはならないが、政府からはなかなかそうした発想が出てこないようです。

管総理は盛んに現地に行きたがっているが、市民運動家というのはやはり「御用聞き」なんですな・・・・。
「なんかお困りの事はありませんか」と町内を廻るだけで、大所高所からのリーダーシップや構想力を持ち合わせていない。
いずれにせよ、本格的な復旧・復興のためには「連合政権」を作るより他ないのははっきりしている。

もっともリーダーシップの不在は民主党政権に始まった事ではない。自民党政権もだらしなかった。
外にはアメリカ、近年では中国に靡き、内では官僚と手を結んで、ともに堕落してきた。
奇しくも震災が起きた11日当日、諸々の事情から私は都知事選に立候補せざるを得なかった。私は150%今期限りで引退するつもりでいたのですが。
再出馬を決めたその日に、こうした未曽有の震災に遭うのも巡り合わせかもしれません。

復興には、住居を失った人たちへの受け入れも準備しなければなりません。
当面、東京武道館と味の素スタジアムで受け入れ態勢を作り、都営住宅などへの入居も検討しています。

ただ、東京にはスペース的に十分な空きがない。「田中角栄のような人材がいたら」という思いがよぎります。
つくばエクスプレス線という、秋葉原とつくば市を結ぶ電車がありますが、途中、円園と農地と森林が続いています。
角栄さんがいたら、そこで被災者を受け入れ、返す刀で新しい街をいくつも作りだしたかもしれない。まあ利権も込みですが・・・・・笑い。

共に苦難に直面している国民が今こそ連帯を取り戻し、「個人の欲望を超える価値観」を持たなければ、日本の復興はあり得ない。

この危機が、日本人を変え、この国の立ち直りのきっかけになる事を切望します。


以上が「石畑慎太郎:東京都知事」が書かれた内容です。

私は、「原子力発電を止めてはいけない、日本の将来のためには原子力は必要だ」と言い切る事が出来る石原慎太郎はすごいと思いました。

今現在、国民の圧倒的な意見は「原発反対」でしょう。
その中で原発は絶対に必要だと言い切れる意思の強さに敬意を払うのです。

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